pp―the piano players―
「うるさい」
 椅子から立ち上がり、圭太郎君は頭を抱えて階段を上がっていった。やがて、奥の部屋ではなく机のある部屋のドアが閉まった。

「レポートか」
 先生がクスクス笑って、みんなが使ったカップや湯飲みを片付ける。圭太郎君があんな態度で部屋に入るのは、レポート課題に詰まっている時と相場は決まっている。
 わたしは圭太郎君に倣って、子犬のワルツを弾く。

「圭太郎のはミニチュアダックスフントの子犬で、早紀ちゃんのは柴の子犬だ」
 加瀬さんが楽しそうだ。また来るよ、と先生に声をかけ、コートを羽織って帰って行った。


 目を閉じていると、圭太郎君が部屋で頭を抱えているのがわかる。先生が上機嫌で洗い物をしているのがわかる。
 この腕を伸ばせば直ぐに届く、あたたかい存在。
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