pp―the piano players―
「何しに来たんだよ」
 圭太郎君の目は、たまに、とても鋭いものを放つ。イライラしているのが伝わって来る。
「さっきの」
「宮間の話はしたくない」
 言葉もまた鋭い。わたしの口から流れるはずだったものを、すぱんと切り落とす。この、胸につかえているものも切り落として欲しいのに。

 どうして、先生はえみちゃんを受け入れたのか。先生は、あの人との仲違いに終止符を打ったのか。
 圭太郎君に聞きたかったし、一緒に考えて欲しかった。

 そうか。
 卑屈になっているのが自分でもわかるけれど、どうしても止められない。

 わたしはここを離れてしまったから、わからないことが多いんだ。ここはもう、わたしの知らない場所なんだ。

 圭太郎君は立ち上がり、壁の本棚へ向かった。びっしり収められた楽譜は先生が収集したものだけれど、勝手に使って良いことになっている。そこから一冊の楽譜を抜き取り、はらはらと捲りながら、圭太郎君はさっきと同じ言葉を言った。
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