pp―the piano players―
「否定されてたなら簡単だよ」
 酒井君はあっけらかんとした声を上げた。
「認めたら、仲違いは終了だ」

 認めた。
 あの人は、先生や先生の音楽や――わたしたちを認めたのだろうか。

「何かあったの?」
 私はどんな顔をしていたんだろう。酒井君がひどく心配そうに声をかけてくれた。

「認められたら、許せるもの? 受け入れられるものなの?」

 その時、どこからか「ナオタカー」と酒井君を呼ぶ声がした。酒井君ははっとして腕時計で時刻を確認すると、「やばい」と呟いて立ち上がった。
「少なくとも僕は、早紀に認めてもらいたいと思っているよ」

 ごめんまた連絡する。そう言うと、酒井君は足早に食器を返却して出て行った。

 結局私は一人残って、冷めたお茶を飲む。
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