時計塔の鬼


慌ててはダメ。

冷静に、冷静に。

そう思い込もうとの努力もむなしく、手足の震えは増すばかり。



……怖い、怖いよ。

シュウ。

怖い。



相手が何かもわからない。

ただ、つけられているということに対する、純粋な恐怖。

そして、今は太陽もはるか西方へと沈んだ後に残る、闇の時間だ。



助けて……。

そう思って、愕然とする。

シュウが来るはずがないことを、来れるはずがないことを、思い出したからだった。

改めて思い知ってしまったからだった。



怖い。

……どうしよう。



私が二つにぱっくりと割れてしまったかのようだ。

片方では、恐怖と焦燥感でパニック寸前の自分がいて、もう片方では、現状を冷静に見つめて考える自分がいる。

気付いているのを気付かれないようにしなくてはいけない。

けれど、怖い。

歩調は変えずに、意識して努めてさりげなく歩幅を広くしなくてはいけない。

……怖い。

今、私はどうすればいい?


< 216 / 397 >

この作品をシェア

pagetop