時計塔の鬼
突如背後から聞こえた男の声に先ほどの恐怖が抜けずにビクッとしたが、振り返ってみるとそこには見知った顔があった。
「葉ちゃん!」
その幼さの残る、成長期の男の子の顔を見て、歓声をあげた。
と、同時に“もう大丈夫”という安堵感が胸に広がった。
そこにいたのはコンビニの制服を着た高校生。
名前は、沖田 葉平。
葉ちゃんは私の従兄弟で、通学の都合上、私の実家に居候してる。
通学先は私が勤務してる学校……つまりは、シュウがいる時計塔があるあの学校だった。
「葉ちゃん、バイト中なの?」
「そうだよ。もうすぐあがるけどね」
私の問いににっこりと笑うその笑顔が愛らしい。
高校生に向かって愛らしいっていう評価は相応しくないかもしれないけど。
高校一年生にしては平均を少し下回るほどの身長に加えて、癖のある黒髪に甘い顔立ち。
この前、担当してた三年生の教室で葉平の名前を聞いたのを唐突に思い出した。
葉ちゃんは年上の女の子たちから、モテていた。
この愛らしい笑顔を見ると、納得してしまうけれど。
けれど、今の問題はそこではなかった。
「うちの学校ってバイト申請制よね? 申請したの?」
「まさか。夕枝姉ちゃんが黙ってたらバレないから大丈夫ッ!」