魔女の瞳Ⅵ
「でもお母様…」

私はようやく少し落ち着きを取り戻し、お母様と修内太をソファにすすめて紅茶の準備を始めた。

「一体どういう用件で来たの?長老と時々『念話』の魔術で話していたのもお母様なんでしょ?」

「ええ」

私の出した紅茶を、まずは香りを楽しみながらお母様は頷く。

「長老から、貴女達の話はよく聞かされているわ。メグ…随分強くなったのね。魔女狩り将軍や亜吸血種、悪霊までも仕留めたそうじゃないの。何より…」

お母様は私を誇らしげに見つめる。

「デッドゲイトの掟である『人間を傷つけてはならない』という決まりを破り、『限定』の魔術の効果でこの島国に幽閉された形になったものの…貴女は人間と共存するという道を選び、修内太君のようなパートナーと手を取り合い、遂には闇に生きる魔女には相反する筈の聖堂魔術を行使できるまでに技量を上げた…メグ、母は嬉しく思います」

お母様の両手がユラリと上がった。

左右同時に、そのたおやかな白い指が複雑な別々の魔方陣を同時に虚空に描き始める。

その魔方陣に魔力が注ぎ込まれ、柔らかな光を放つ中。

「もう十分に贖罪は果たした筈です…メグ、頑張りましたね」

お母様はいともたやすく。

「『限定解除』の魔術を行使します。メグ、貴女はもう無罪放免ですよ」

私の体を縛っていた『限定』の魔術を、二つの魔方陣の効果により打ち消した。

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