中学最後の夏休み《短》
「とにかく帰るぞ」
俺はベンチから立ち上がった。
こんな時間にこんな場所で未成年の俺達が長居するのは、補導して下さいって言ってるようなもんだ。
だけどナツはなかなか立ち上がらない。
「ナツ?」
「帰れないの……」
ナツの手を引こうと思ってのばした手が思わず固まった。
「えっ?」
「お母さんには友達の家に泊まるって言ったから、こんな時間に帰ったら怪しまれちゃう」
確かに今帰ったら本当は男の家に泊まってましたって言ってるようなもんだ。
「じゃあどうするんだ?」
友達の家にでも泊まりに行くのならそこまで送ってやろう。
「拓の家に泊まっちゃだめ?」
そんな俺の問い掛けにたいしてナツは、そんな信じられない返答をくれた。