【完】キス、kiss…キス!
膝に顔を埋めて、その太陽からの視線をせめて視界からだけでも隠すように小さく丸くなる。


そうするど、まるで、この世界に私しかいないような錯覚に陥って、ナオちゃんは、私の妄想だったんじゃないのかとさえ思えてしまう。


だけど、太陽から受けていた刃が、ふいに、ふわりと何かで防がれた。


「……はぁ、やっと見つけた」


続いて、震えた腕が体に回ってきて、ぎゅっと抱きしめて私の存在を確認する。


「折角の二人っきりの旅行なのに俺、デリカシー無かったよね。ホントにゴメン。もし俺が逆の立場でも、絶対怒る」


どうしてナオちゃんはこんなに優しいの?私が悪いのに。そう思うと、やっと落ち着いた想いがまた、荒波のようにぶり返す。


「違う!私の勝手な嫉妬だから!ナオちゃんは悪くないの!」


私が言うと、ナオちゃんは私から離れてポケットから何か取り出した。


ナオちゃんの、オレンジ色の携帯電話だ。


「姫さんを不安にさせるものなんか、要らない」


「ちょっと!ナオちゃん!?ダメっ!」


ナオちゃんが何をしようと思ったのか分かって、全力で止めたけど、それを非力だと言わんばかりに振り切ったナオちゃんは、自分の携帯電話を海へと投げてしまった。


ぽちゃんと水しぶきがそこに舞って、ナオちゃんの携帯電話は波にさらわれる。
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