【完】キス、kiss…キス!
「どうしてそこまで……」


海の中にさらわれてしまった携帯電話の落ちた場所から、私はまた泣きそうになりながらナオちゃんの姿を瞳で捉える。


すると、ナオちゃんは、なんとも言えない、怒ったような悲しいような顔をした。


そんな顔は、出会ってから一度も見たことがない。見たくなかった初めての顔。


「……俺、不安だよ。姫さんは、俺ほどこの恋に本気じゃない気がする。そんなに俺、頼りない?頼りないか、10歳も年下で、高校生だもんね」


言われたその言葉は、私の体を刺して、えぐって、貫通する。すると、私の体からは見えない出血をしている気分。


私だって好きだよ。本気だよ。だから怖いし、不安なのに。10歳も年上で、ナオちゃんからすればオバチャンだし、いつか飽きられて、捨てられるんじゃないかって思ってる。


……心の奥でいつも、秋斗の時みたく、もしかして私ばっかり好きなんじゃないかってすら、思ってる。
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