思えば子供の頃、世界は無限に広いと感じていた。将来、何だってできるし、どこへだって行ける、と。

しかし歳を重ねるにつれ、次第に不自由を感じる。そんなに思うようにはいかない。世界に限界を、おぼろげに感じはじめたのだ。さらに成長すれば、その限界…壁の存在が、より現実的なものとして、具現化するだろう。子供の頃の夢が宇宙飛行士でありながら、成人してサラリーマンになる少年のいかに多いことか。壁の存在に気付くほど育った少年は、夢想を語れないのだ。

もしかしたら、全ての人間は…。生まれながらに部屋に閉じ込められているのかもしれない…。ただ、それに気付かないだけ…。

最初はおぼろげに、やがて確実に、部屋の存在を知る。壁がある。絶対的な、壁が。そして…、老衰か病気かいじめかその他の要因により、部屋は縮小をはじめる。そして最後、死ぬ時に、圧死の恐怖を味わう。今、私が感じている、この恐怖を。

人間とは、つまりそういう生き物なのでは?
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