その日、僕は神になった
 終礼の鐘と共に俺は家に帰った。部活や友人?そんな質問は愚問でしかない。鍵を取り出し真っ暗な玄関に足を踏み入れる。「おかえり」そんな暖かい言葉に迎えられたのは、もう何年前のことだろう。中学入学と共に母親は働きに出るようになり、それからは一度もないだろう。経済的な問題で両親は共働きを始めた。表面上はそういうことになっているが、その本当の理由を俺は知っていた。母親は俺といる時間をなるべく作らないようにしたかったのだ。
 ある晩、両親が口論しているところを聞いてしまった。その内容は、五年経った今でもハッキリと覚えている。
< 140 / 368 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop