その日、僕は神になった
「どうしたんだ、急に働きたいだなんて。そりゃ家のローンもあるし、贅沢な生活はさせてやれないかもしれないが、お前まで働きに出るほど困っている訳でもないだろ」
「お金の問題じゃないの。それくらいあなただって分かってるでしょ?分かっていながらしらを切らないでよ」
「俺がいつしらを切った?」
 父親の怒気を含んだ声に怯みもせず、母親は続けた。
「飽くまでもしらを切り通すつもりね。それならばちゃんと言ってやるわよ、一緒に居たくないのよ!」
 離婚の危機だと俺は直観的に悟った。だがそれは勘違いだったと、母親の次の言葉によって思い知らされた。盗み聞きなんてするものじゃないのだ。
「あの子と二人きりなんて、もう耐えられないの!学校が終わればすぐに帰ってきて、あなたが帰ってくるまでずっと二人きりなのよ、そんなのもう耐えられないの!」
「バカ野郎、あいつが聞いていたらどうするんだ!」
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