その日、僕は神になった
 楓真は真っ暗な天井を眺めながら悟った。俺にはどこも行く場所がなく、そして誰にも必要とされていないことを。分厚い遮光カーテンに遮られた窓からは、街灯の明かりすら差し込まず、枕元のデジタル時計を伏せてしまえば、そこには本当の暗闇が訪れた。
 暗闇の一点を凝視し過ぎたからだろうか、目が痛み一筋の涙が零れた。その生暖かさが憎かった。生まれてこなければよかったのだ。学校では苛められ、教師にもさじを投げられ、唯一の味方だと思っていた二人からも、疎ましく思われていた。
 勉強が出来る訳でもなければ体形も体形なだけに、スポーツが得意な訳でもない。だからと言って音楽や絵画など芸術面で特化している訳でもない。内向的な性格と言えば聞こえがいいが、ようは暗いだけ、そしてだめ押しとばかりにこの容姿…。
 この暗闇の中に溶け込んでしまいたかった。そして朝の訪れと共に消え去ってしまいたかった。誰にも気付かれずに、最初からそこに存在なんてしなかったかのように。
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