その日、僕は神になった
「あなたがしらを切るからじゃないの。私だってこんなこと言いたくないわよ!でもどうしょうもないの…。このままじゃ、またノイローゼになりそうだわ」
 また?と言うことは、以前にもノイローゼになったことがあるのだろうか?そんなことを冷静に考えていた。ショックとは、時に後からやってくることもあるのだ。その衝撃が大き過ぎた時などは特に。
「それは育児ノイローゼになった時のことだろ?あいつはもう赤ん坊じゃないんだぞ」
 そんな過去があったのか。言ってくれれば良かったのに、そうすれば心の準備だって出来たというものじゃないか。まぁ、そんなことを言える訳がないか。俺は胸の内で苦笑いを漏らしていた。
「だからこそなのよ!ずっと会社にいるあなたには分からないわよね…。日に日にあの子が何を考えているか分からなくなってくるのよ。何も言わなければ表情にも出さない、帰って来てもずっと部屋に引きこもってばっかり、私が話しかけても返って来るのは生返事だけ、一体どうしろって言うの?ほんと…、一緒にいると気が変になりそうなのよ」
 それを聞いた父親は、それ以上の反論はしなかった。ただ一言「分かった」と頷くだけで。
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