その日、僕は神になった
 真が死んだ。楓真、享年十七歳、夏の終わり。彼の一生は、土の中で四年の歳月を過ごし、一週間という限られた地上での日々に、その産声を高らかと上げる蝉よりも儚かった。彼は十七年という歳月を土の中で過ごし、その命の最後、一瞬だけ輝きを放ち、そして散っていった。
 僕にとっては正に寝耳に水のニュースだった。見渡しの悪い交差点、黄色信号に加速した自動車に轢かれそうなった同級生を庇い、自らの体を犠牲にした真は、病院に運ばれ緊急手術を施されるも、医師の努力も空しくその十時間後に息を引き取った。
 僕がその事態に気付いた時には、真は額に三角の白い天冠を着け、死装束に身を包み、長方形の狭い木の箱に納められていた。彼の死に顔は、綺麗だった…。車に撥ねられ、その巨体は二・三メートル離れたアスファルトの上に叩きつけられ、全身を強打し、いくつもの骨を砕かれ、折れたアバラの骨が肺に突き刺さり、内臓が破裂し、何時間にも渡りその体をいじくられた挙句に、死んでいった。それなのに彼の表情には、苦悶の色が一切なかった。逆に全てから解放され、晴れ晴れとしたような、日向で昼寝をしているかのうように、穏やかな死に顔だった。
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