薔薇姫-another story-
甘い香りに誘われ、自然に足が動いた。
その先に咲き乱れるのは、この城で唯一、薔薇以外に育てている花。
魔界の固有種―――コウルイカ。
その花は、成長するに従って頭を下げ、釣り鐘のような紅い花を咲かせる。
その姿が、紅い涙のように見えることから、"紅涙花"と名付けられた。
そして紅涙花は、独特な甘い香りを発する。
その香りは、気分を落ち着かせる効果があると言われていた。
ザァッと吹いた風が、紅涙花を揺らした。
「―――…」
舞い散る花びらの隙間から…人影が浮かび上がった。
あれは―――マレッタ様。
風に靡いた髪は、花びらと共に空を舞う。
その花びらを見つめる表情は、どこか憂いを含んでいて。
…綺麗だ、と思った。
私は、一歩一歩マレッタ様に近づいていく。
空に舞った花びらが地面に伏した時、マレッタ様が私に気づいた。