図書館で会いましょう

「そんなことねえよ！」
浩平は誠司の肩を強く叩いた。誠司の体がバランスを崩すぐらいだった。
「おっ…」
「まずは自分の気持ち、伝えてみないと何も始まらないじゃん。お前、このまま何もしないで由美ちゃんを誰かに取られてもいいのか？」
浩平の顔は真剣だった。誠司には浩平の気持ちが痛いほど伝わる。
「わかったよ。」
誠司は浩平の言葉に笑顔で答えた。

その日の夜。由美の携帯が鳴る。着信を見ると誠司からだった。由美は昼間の真理子との会話を思い出す。急いで電話に出た。
「も、もしもし。」
平静を装おうと思っていたのに声が上ずってしまった。誰も見ていないのに由美は顔が熱くなる。
「由美か。今、何してるの？」
誠司の声は由美とは逆に静かに平静だった。いつもよりも静かに感じる。
「今？家でテレビ見てたよ。」
電話を持ちながら片方の手でテレビを消す。若干、手が震えているのが自分でもわかった。
「そうか。なぁ、今お前ん家の近くの公園にいるんだ。」
「公園？目の前にコンビニがあるあの？」
「あぁ。今からこれないかな？」
「どうしたの、急に？」
「話したいことがあってさ…」
誠司の声が変わってきた。
「うん…わかった。ちょっと待ってて…」
由美はそう言って電話を切った。携帯を持ちながら心臓の鼓動が速くなるのを感じる。
『まさか…誠司が…』
今すぐ真理子に電話したい気持ちだった。それを押さえて支度を始める。頭の中では期待とそれと同じぐらいの不安が入り交じっていた。