a☆u★c〜全部請け負う部活動!!〜



* * * * * *


楡はある男と睨み合っていた。

町の外れにある、天井には穴が開き、薄明かりが漏れている薄暗い廃倉庫の中で、視線だけがぶつかる。


「オイ、何の用だよ。こんな所に呼び出して、ただで済むと思ってるのか?」

「うん」


男の怠そうな質問に、楡は更に怠そうに答える。

男は怪訝そうに眉を寄せながら、自分をこんな所まで呼び出した楡を憎々しげに眺めた。

そんな男の気持ちを知ってか知らずか、楡は新聞の切り抜きを男に差し出し、口を開いた。


「それ。覚えてんだろ」

「……………」


『花村夫婦殺害事件』

『強盗殺人と見て捜査進める』


薄暗くても、大きな見出しは目に留まる訳で、男は一瞬目を丸くした。


「二年間も上手く逃げれたもんだな。井野坂信治さん」

「……何の話だ」


楡の言葉のあとに、あからさまに男──井野坂は嫌そうな顔をする。

楡はそんな井野坂を見ながら、更に続けた。


「人殺して少ない金奪って…罪悪感は無かったんか?」

「オイ、それは…俺が犯人だって言いたいのか?」

「…違うの?」


楡はわざとらしく首を傾げた。






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