a☆u★c〜全部請け負う部活動!!〜
井野坂は新聞の切り抜きをグシャリと丸めると、楡に投げつけ、鼻で笑った。
「わかってんだろ? 俺は2年前、証拠不十分で不起訴だったんだ。現場からは毛髪の一本も──俺が現場に居た形跡は何一つ見つからなかったんだぜ? それどころか、あの家族以外の痕跡は見つかってないんだからな」
それでもまだ俺を疑って掛かるのかよ、と井野坂は続けた。
楡は新聞の切り抜きを拾い上げ、感情の読めない表情で口を開いた。
「逆だ。夫婦を殺して現金を奪ったにもかかわらず、現場に何一つ痕跡が残らないのはおかしい。本来ならばアンタの言うように、毛髪、唾液、その他体液などがカーペットから見つかるはずだ。
だが今回は、目撃証言があるにも関わらず、アンタがあの現場に居た痕跡はなかった」
「……何が言いたい?」
井野坂の余裕の表情が、少しばかり崩れた。
楡は淡々と告げた。
「アンタには共犯者が居た。それも、鑑識の中に」
「──…!」
井野坂の背中に、冷たいものが走った。