a☆u★c〜全部請け負う部活動!!〜
間一髪、とはこういうことを言うのだろうなと、楡は呑気にそう思った。
だが、その額からは鮮血が滴っている。
湿った床にポタポタと着地する赤い液体を見つめながら、楡は目の前で角材を持つ男をゆっくりと確認するように見上げた。
「なんだ、避けちゃったか」
男は悪怯れる様子もなく、角材で肩を数回軽く叩きながら、井野坂の隣に立ち、彼に目配せをした。
井野坂と会話している間に背後をとられ、危うく後頭部を殴られるところだったが、咄嗟に気配に気付いて振り向き、飛び退いたので直撃は避けることができた。
しかし、額を掠めてしまい、皮膚が破れたのか出血してしまった。
なるほど、はめられたかと悟った。
「こんな人気の無い所に呼び出すなんてさ、頭が切れるようで、アンタかなりの馬鹿だよ」
男──吉成は角材の切っ先を楡に向けながら言った。
「俺達がアンタを殺して、隠蔽工作するだろうとは思わなかったわけ?」
薄暗い倉庫の中、鉄の臭いが鼻を突く。
楡は無言のまま片膝を付き、冷たく見下ろしてくる吉成を見ていた。