a☆u★c〜全部請け負う部活動!!〜



明衣は雨で顔にへばりついた髪をそのままに、肩で息をしながら楡を見つめている。


「…あたし達に隠し事なんて…良い度胸じゃない」

「卯月……」


呆気にとられたような顔をして、楡は彼女の名前を呟いた。
そして、その隣に居る少年を見て、更に目を丸くする。


「……基…」


少年──基は、困ったように眉尻を下げて笑うと、頬を掻いた。


「ごめん、沚さん。俺、やっぱり心配だったんだ。自分のことくらい、自分でケリ付けたかったし……。だから、沚さんの後をこっそりつけてた。そしたら、この人達に会って…」


連れてきちゃった、と笑う基に、楡は肩の力が抜けてしまい、ドカリとその場に腰を下ろしてしまった。


「…お前…花村の息子か…?」


井野坂が今更目を見開き、基を凝視する。

基は頷いて、井野坂を見つめ返した。


「…話は、大体わかってる。親父が、アンタにひどい事してたってのも…」

「………………」


基はゆっくり話し始める。

井野坂も吉成も、何も言えずに棒立ちのままだった。






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