a☆u★c〜全部請け負う部活動!!〜
ベンチに腰掛け、特に何かを話す風でもない楡に、明衣は少し戸惑いながらも目を向けた。
元々口数は少ないのだろうが、こういうときは気を利かせて、何かしら話し掛けてくれてもいい気もする。
「……あたし、動物園なんか来たの、久ぶりでさ」
「…ん」
「凄く、楽しかった。今は何となく、お父さんとかお母さんも忙しそうだけど……小さいとき、よく来てたなぁって」
「……仕事?」
「うん。お父さんもお母さんも先生やってるから、部活の試合とかで、土日も居ない日の方が多くてさ」
「……そっか」
明衣の話は聞いているのだろうが、反応は凄く小さなものだった。
なかなか会話が発展せず、明衣はまたすぐに気まずくなってしまう。
こんな内向的で、暗い男がどうやって教師に成ったのだろう。
──それよりも、この胸の高鳴りは何なんだろう?
何故こんなにも、あたしはコイツに話し掛けているんだ、会話したいと思っているのだろう?
さっき手渡された水はもう温かった。