a☆u★c〜全部請け負う部活動!!〜
取り敢えず、フリーパスがあるのに何も乗らないのは気が引けたので、明衣はボートに乗ることにした。
これなら激しく動く心配もないし、気分が悪くなることはないはずだ。
本郷のケータイにメールを入れ、合流してボートに乗らないかと尋ねる。
返事は割とすぐに返ってきて、「今行くね★」とご機嫌な文面だった。
一体いくつの絶叫マシンを制覇してきたのだろう、明衣は無意識に遠くを見つめた。
そして、荷車を押しながらぼーっと歩く楡に尋ねた。
「ねぇ、アンタは乗るの?」
「……何に?」
「あたし達これからボートに乗んだけど、アンタはどーすんのって」
「……俺、フリーパス無いから」
「せっかく来たのに何もしてないじゃん。何か乗ればいーのに」
「それ、引率者に言う台詞?」
「うん。引率者に言う台詞」
明衣の態度に、楡は無表情で息をふぅっと吐いた。
明衣は殆ど無意識に、楡の手を握って、引っ張って歩いていた。
身長差があり過ぎて、まるで親子のようだった。
楡の手は、随分と暖かい気候に反して、ひんやりと冷たかった。