a☆u★c〜全部請け負う部活動!!〜


その奇声を合図にしたかのように、いきなり楡がアクセルを思い切り踏み込み、グルグルとハンドルを切り始めた。

当然、車内は激しく揺さ振られ、後部座席の四人は潰されそうなほどに遠心力で倒れてしまう。

その際に頭を打った明衣が怒りの形相で楡を睨み付けた。


「いきなり何すんのよ!バカじゃないの!?」

「早めに撒かないと、このまま市街に戻るわけに行かないだろ」

「何で尾行されなきゃ成んないの!?」

「狙いは間違いなく君だ。恐らく暴力団か、闇金融の手の奴らだろうな」


麗が揺れる車内の振動に耐えながら尋ねると、楡は再びハンドルを切りながら答える。

スピードを落とさずに角を曲がったため、タイヤと道路が擦れて甲高い音が耳を突き刺した。


「あ……あたしの……?」

「二億円の少女と高々とテレビで放送されたんだ。君を捕まえて身の代金を要求することもできるし、人身売買でも言い値が張るはずだ」

「そんな……」

「だけど」


楡はいったん言葉を切り、助手席で気絶していた五月女の頬を叩いて覚醒させ、小さな萎れた風船のようなものを手渡した。


「君達を家に帰すまでが俺達の仕事だから」


楡はそう言うなり、五月女に指示を出す。


「それを後ろの車のフロントガラス目がけて投げろ。…外したらこのスピードのまま車から降ろすから」





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