Magic Academy ~禁書に愛された少女~
「も…だめぇ……」

ずっと高速で飛び回る箒に、そらはふらふらになり、手が離れそうになった。

「スレイプニル!」

シークが叫んだ瞬間、箒がぴたりと止まった。

「うわっわわ!」

急停止に思わず落っこちそうになるそらは、ぎゅっと箒にしがみついた。

「あっぶなーい…」

ほっと胸をなでおろしていると、箒はゆっくりと下に降りていった。

「そら、こいつの名前はスレイプニル」

「え?名前?」

箒に名前って何だ?と、きょとんとした顔になるが、自分の持ち物、特にぬいぐるみなんかに名前をつけていたりする人もいるわけで、そらはふーん、と答えた。

「スレイプニルって…またかっこいい名前つけたのね」

と、そこまで言って、そらはふと首を傾げた。

「…なんで名前なんて知ってるの?まさかこの箒、シークの??」

聞くとシークは苦笑しながら答えた。

「そうだな。昔こいつは、俺の愛馬だったんだ」

「へぇ…」

箒を馬にたとえるなんて、よっぽど気に入っていたんだろうと、そらは感心した。
そして、同時に、昔はやはり、シークは人間だったんだと、改めてそう思った。

「早くて優秀だったんだ、こいつは」

シークが言うと、スレイプニルはそらにすり寄ってきた。



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