禁じられた遊び
店内はとても広かった

克海の馴染みの店なのだろう

店員たちが、あれこれと話かけてきては商品を差し出してくる

女性モノが多い店で、馴染み……か

何人の女をここに連れてきて、自分の好きな匂いにさせたのかな?

きっと母以外の女も大勢、連れてきたのだろう

克海も克波もよく似ている親子だ

匂いにはこだわりを持っている

まるで犬みたい

縄張り意識がきっと強いのね

「いつものを」

克海が店員に告げる

店員は大きく頷くと、店の奥に入って行った

『いつもの』…ねえ

「他に欲しいものはあるか?」

克海が私の耳元で囁いてきた

「いいえ」

お金以外はいらない

くれるならお金が一番よ

私は店内を眺めた

ブランドグッズが棚に並んでいる

校内でよく見かけるブランドだ

私には興味のないモノばかりだけど、クラスにいる女子には興味のあるモノかもしれないな

こういうのを見て、喜んでいる人を私はいまいち理解できない

何が興奮させるのか

私にはわからない

「しかし五月蠅い」

ポケットから、私の携帯を出した

液晶には克波の名前があった

「電源を切っておけ」

私の携帯が、私の手に戻ってきた

手の中で、携帯が震えている

きっと克波が苛立っている

夕飯も作らず、何をしているのか…と苛々しているはず

< 31 / 200 >

この作品をシェア

pagetop