おいしい紅茶を飲む前に
「おまかせするわ。ちゃんとおめかしして待っています」

「いいねぇ、その台詞。六時には参りましょう。今夜は踊りますよ、メアリーアン」

 ぱたり、と窓が閉まり、また馬車は動き出した。

残されたメアリーアンは、まだ笑っている。

それから、ふいに心配そうな顔になったり、……。


 突然。

なにかに背中を突かれたような勢いで、まさしく脱兎のごとく走り出したかと思うと、角の向こうに消えてしまった。


 ……追いかけていたことを思い出すスキもなかった。思わず手を、胸に挿したバラに持っていく。
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