おいしい紅茶を飲む前に
内ポケットから取り出し、手に握ったそれは、……ちょっと、お兄ちゃん。

 館へ向かって歩き出した彼に、レスリーが並んだ。


「それでおまえは? どこへ行くんだ?」

「中に入る」

「なんだよ、それは。まだ指示は出ていないんだ。なんの命令もない。これは高度に政治的な問題なんだって、フレディ、聞いてんのか? さっきから人の話を、いったいなんだと思ってんだよ」

「僕は休暇中だよ。レスリー」


 銃には弾が装填されている。フレディに本気でそう言われ、レスリーは空を仰ぎ、唸る様な声を出した。

「メアリーアンか……」

メアリーアン?


「わぁっかったっ。一緒に行くぞ」
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