加納欄の想い シリーズ12
 記憶のある声だった。

 いつも私を見守ってくれている声だった。

 それと平行に。



”嫌い!大っ嫌い!!私は、あなたなんか好きにならない!!”



 以前にも言った言葉だった。



嫌いなんて口にして、今でも大好きで・・・。


誰より大好きで・・・。


あの人に一人前と、認めてもらいたくて、毎日頑張っていたのに・・・。


なんで、1番大切な人を思い出せなかったの・・・。


 あたしは、頭痛が治まり、ゆっくり目を開いた。

「欄、大丈夫か?病院手配するから、もう少し我慢しろよ」

「・・・大山、先輩」

「大丈夫だからな。え?」

「大山先輩」

 あたしは、大山先輩に、優しく微笑みかけた。

「ら・・・」

「思い出しましたよ。大山先輩のこと・・・ごめんなさい。言うこと聞かないで」

 大山先輩は、無言で力一杯あたしを抱きしめた。

「せ、先輩」

 改めて、抱きしめられると、恥ずかしくなった。

「おい」

 抱きしめたまま、質問してきた。

「はい?」

「・・・アイツと、結婚したのかよ」

「・・・してませんよ(-.-)孔明師範の作り話です」

 大山先輩が、あたしに気づかれないように、小さくため息をついた。

「ま、まぁ、わかってたけどな、最初から。アイツの作り話くらい」



ずいぶん、気にしてたようですけど?



「もう、大丈夫ですよ」

「全部、戻ったのか?」

「ん~。全部ではないみたいです。ある程度戻ったんですけど、遼となんで、あそこに行ったのか。そこは、思い出せないんですよねぇ。それ以外は、ほぼカンペキです」

 あたしは、大山先輩を見て、ニッコリ笑った。

「記憶が戻ってしまったんですか?つまんないですね」

「孔明師範!」

 あたしは声が聞こえたと瞬時に、思わず身構えた。

 武田との約束の時間には、まだ早かった。

 大山先輩は、あたしの前に、立ちふさがった。

「おや、早速ナイト気取りですか?遼の二の舞にならなければいいですね」

 孔明師範が、ニヒルに笑った。

「欄、中国へ帰る時間ですよ」

 孔明師範が、あたしを見ながら言った。

「あ、あれは無効です!孔明師範、嘘ついてたじゃないですか!」


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