共鳴り
黒塗りの高級車の後部座席に押し込められ、横には国光さんが乗り込んでくる。


すぐに彼は店の名前とおぼしき場所を告げると、運転手の短い返事と共に、それは走り出す。




これからどうなるんや?
俺、どうされるん?


清人は大丈夫なんか?





頭の中は不安だらけやったけど、それを問うより先に国光さんは携帯を取り出し、話を始めた。


会話の内容から、相手は先ほどの嶋さんやと思うけど、俺の緊張の糸は途切れることはない。


国光さんという人は、とにかく掴みどころがなかった。


あの恐ろしいカシラである嶋さんにもへらへらとした態度を貫き、雰囲気だけ見れば怪しいクスリでもやっていそうな感じ。


この人は嶋さんに一番信頼されているというのは後から聞いた話やけど、清人とは別の意味で飄々としていて、やっぱり何を考えているのかわからん男。


常にガムを噛んでいる。


ガムを噛んでいるのに、煙草も吸う。


口の中にあるものの存在忘れて飲み物と一緒に飲み込んで、ありゃりゃ、とか言ってる不思議な人でもあるんやけど。


ちなみに、そのガムを誰かにやるとこは、未だかつて一度も見たことがない。


まぁ、そんな人。

< 56 / 339 >

この作品をシェア

pagetop