共鳴り
到着したのは、見るからに風俗店の裏口やった。


やっぱり引っ張られる形で中へと連れられると、そこには裸の女やキャミソール、下着姿の女ばかり。


御苦労、御苦労、なんて言いながら女の間を割って進むと、すぐに店長らしき男が焦ったように近付いてきた。



「嶋さんから連絡来てるだろ?
レイコさんはいつもの部屋だよな?」


そう言って国光さんは、彼の返事を聞くより先に、足を止めることなくさっさと進む。


そしてひとつの扉の前まで来て、コンコンとノックし、やっぱり中からの返事を待たず、ドアを開けた。


薄暗い部屋にはベッドと照明、奥はシャワー室のようになっている。


そしてそこに佇んでいたのは、茶色っぽいベージュのバスローブを纏っただけの、恐ろしく綺麗な女。



「国光くん、それじゃノックの意味ないって言わなかった?」


それがレイコさんやった。


彼女は煙草を消し、ふうっと息を吐いて視線を俺に移す。



「この子がそう?」


ふうん、と値踏みするような瞳。


冷たくて、光さえ入らないようなそれに捕えられ、俺は身を固めた。



「男の勲章ってのはどうしてこう、いつもいつも痛々しくて、血生臭いのかしらねぇ。」


俺の顔は、殴られまくって腫れ上がってて、多分原型を留めてはいなかったと思う。


おまけにアザに加えて血みどろで、彼女はそんな俺を迷惑そうな顔で見ていた。



「まぁ、2,3日は使い物にならないと思うけど、その後教えてやってよ。」


「それも嶋さんからの指示?
嫌よあたし、こんな子の面倒見るの。」


「そんなこと言わないでよねぇ。」


突っぱねるレイコさんと、なだめている風の国光さん。


けど、別に国光さんも、本気で頼んでいるようには見えないような、どこか言葉尻が適当に感じる台詞ばかり。

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