共鳴り
「嶋さんってホント勝手よねぇ。
宇宙一勝手だし、きっと勝手に地球に来る宇宙人より勝手よ。」


呆れたように言う彼女に、国光さんは相変わらずへらへらと笑いながら、伝えときますよ、と返した。


そんなものにもレイコさんは顔色ひとつ変えることはなく、この人は一体どんな人なんかと思った。


多分嶋さんとは、気の置けない間柄やろう。


ため息を混じらせた彼女は、再び俺へと視線を戻す。



「名前は?」


「銀二。」


と、答えたのは、俺ではなく国光さんやった。


眉を寄せてその顔をいぶかしげに見た俺をははっと軽く笑い、「嶋さんがそう言ってたから。」と付け加える。



「銀メダルの二等賞、ってね。」







思い出しても笑えるわ。


俺、銀メダルの二等賞で“銀二”やねんて。


何でも一番やないと気が済まんって思ってた頃もあったけど、確かに俺、清人に何もかもで負けてたし。


殴られ続けてた俺は、あの時馬鹿みたいに震えてた。


助けてくれ、死にたくない、って心の中では叫んでたし、多分そういうの、嶋さんはお見通しやったんやろう。






「俺、そんなけったいな名前ちゃいますけど?」


「お前の名前なんかどうだって良いんだよ。
嶋さんがそう言ってんだから、お前は今日から銀二なのー。」


つまりは過去は捨てろ、ってことだな。


そう言ってまた軽くははっと笑い、国光さんはガムを噛みながら煙草を咥えた。


それが俺の“銀二”の由来や。

< 58 / 339 >

この作品をシェア

pagetop