国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい
炬火(たいまつ)が燃えて短くなったのか、がくん、と折れる音と同時に、
火花が激しく撒き散らされて、ほんの一瞬、周囲をあかあかと照らした。
マルスはレアの言葉を咀嚼して意味を理解すると、眉間に深いしわを刻んだ。
「俺の周りにくだらない者しかいないのは、この俺がくだらない人間だからだと、
そう言いたいのか?」
これが同じ人間の発する声なのかと疑いたくなるくらい、
マルスは先ほどとはうってかわって、地を這うような低い声を出した。
レアは何も言わずに、ただマルスを見つめた。
その深い碧の瞳は、今にも涙に揺れそうでいて、しかし、決してそうはならないのだという、強い意志を感じさせる。
レアに見つめられて、マルスは怒りが引いていくのを不思議な思いで感じていた。
・・なぜだ?
こんな無礼なことを言う女なのに、なぜ俺は、こいつの前だと怒りを爆発させないのだろう。
今までのマルスならば、自分の機嫌を損ねたものなど、その場で手ひどく扱ってきた。
宮殿を追放した貴族もいれば、見せしめに首をはねたものもいる。
一族郎党を処刑したこともあるし、地位の剥奪などいつものことだった。
だが、自分より年下のこの少女にだけは、どういうわけか手を下す気にはなれない。
レアの瞳に見つめられると、いつでもマルスは冷静さを取り戻すのだ。
まるで、レアの瞳に、怒りが吸収されていくように。