国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい
お兄様、と声をかけられて、マルスは後ろを振り返った。
「ディアか。どうした?そんなに息を切らせて」
ディアと呼ばれた少女は、マルスの胸に飛び込んで彼の首に腕を絡ませた。
「クリナリア祭で着るドレスを見てほしいの!」
マルスは、めったに見せない優しい瞳で、腕の中の妹--ディスコルディアを見おろした。
「やれやれ。お前ももう16だろう?もう少し女性として恥じらいを持ったらどうだ?
嫁の貰い手がなくなってしまうぞ」
すでにいくつかの縁談話がきていたが、何が気に入らないのか、ディスコルディアはそれらをことごとく蹴っていた。
「あら、そのときはお兄様にもらってもらいますから、ご心配なく!」
ディスコルディアは、ぷいと頬を膨らませて、マルスに抱きついたまま、そっぽを向いた。
マルスは、ディスコルディアの言葉の裏にある、彼女の期待をうっすらと感じ取ってはいたが、
あえて踏み込みはしなかった。
やれやれ、と、もう一度ため息をつき、マルスは、母の違う愛らしい妹に手を引かれて、歩き始めた。