国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい

さきほどまで、和やかな空気に包まれていた部屋が、ほんの一瞬かげりを帯びたように見えた。


「ディスコルディア。もう良いでしょう?王はお忙しいのですから」


ニュクスはマルスと視線を合わせないよう注意しながら、ディスコルディアをなだめた。


マルスは、そっとディスコルディアに近づくと、額に軽く口付ける。


「とても良く似合っているよ。ディア。クリナリア祭が楽しみだな。きっとまた求婚者が山のように増える」


そのまま、ニュクスの言葉に押されるように、マルスは部屋を後にした。


後に残されたディスコルディアは、慌ててマルスの背中に手を伸ばしたが、

それは届くことなく、空中をさまよった。


部屋のドアがばたんと音を立てて閉まる。



・・山のような求婚者なんかいらないのに。



ディスコルディアが、行き場のなくなった手を、ぱたりと落とすと、

ふんわりとしたドレスの裾が、カサリとかすれた音をたてた。


マルスの背中を切なそうに眺める娘の横顔に、ニュクスは目を伏せた。

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