国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい
なぜ、ここへ来てしまったのか。
マルスには、自分で自分の気持ちが分からなかった。
あとほんの少し待てば、一番の特等席でレアの声と仕草に酔いしれることができる。
それなのに、なぜ、そのほんの一時が待てないのか。
「震えているな」
マルスは、レアがかすかに震えているのを見て、さらに一歩距離を詰めた。
レアの頬に手をやろうとすると、彼女が息を詰めて目を瞑ったのが分かる。
マルスは、指先を伸ばせば彼女に届く位置で、自分の手を止めると、さびしそうに微笑んだ。
「祭祀王としての役目を立派に果たせよ。お前にならできる」
マルスが、レアの望む言葉そのままを発すると、レアの澄んだ瞳に自分の顔が映った。
「はい。ご期待に沿えるよう、努力いたします」
レアの瞳は、心なしか憂いを帯びた色をしていたが、
マルスは、それが自分の欲望がみせる幻だろうと思った。
・・この場で俺の気持ちを伝えてなんになる?
レアはすでに支度を整えており、精神を統一させるのに、自分は邪魔なはずだった。
マルスは、何も言わずにその場を去ると、思わず嘆息した。
・・近頃、俺はどうもおかしい。
変わりゆく自らの心を律することもできず、マルスは頭を抱えた。