国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい
ディスコルディアの笑い声が、扉の前で待つ侍女たちの耳に届いて、
王の不興を買わずにすんだのだと、皆ほっと胸をなでおろした。
扉一枚隔てた内側で、ディスコルディアは、息の続く間、笑い続けた。
「まったく、やられたな。兄をからかうなど、とんでもない妹だな」
マルスは、ディスコルディアの頭をぽんぽんと叩くと、同じように、あはははと笑った。
妹の気持ちに気付いていないわけではなかった。
いつもいつも、自分の後をうるさいくらいについて回っていた妹が、
いつの頃からか、ほんの少し距離を置き、はにかんだように自分を見上げるようになった。
体が丸みを帯び、いつのまにか女として歩き始めた妹。
しかし、マルスはディスコルディアが大事だから、よけいに彼女を妻にするわけにはいかなかった。
ディスコルディアが自分を想う様に、自分は彼女を愛していない。
それがわかっていたから、マルスはディスコルディアの芝居にのった。
・・すまない、ディア。
本当に、仲の良い兄弟でいらっしゃるわね、
機嫌の良い王の笑い声に、侍女の一人が、ぽつりとつぶやいた。