国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい

マルスは、その拍手の波に、危うく飲み込まれそうになっていた。

このまま、頷いて、シギネアを妻にすれば、万事うまくいく。

なにもわざわざ、自分一人が苦労して、この老練な重臣たちを相手に、立ち向かう必要などないではないか。

頑張ったところで、誰に褒められるわけでも、民の信頼を取り戻せるわけでもない。


ただ、こくりと頷くだけ。

それだけで、

また、もとのように、何も考えずに享楽的な生活を楽しめる。

楽しめる・・・。


それは、ひどく甘美な誘惑に思えた。


しかし。

自分の堕落した暮らしを振り返る。


果たして、享楽的な生活を、再び楽しめるのだろうか。

レアではない他の女をはべらせて、朝から晩まで酔いつぶれ、執務はアニウスに一任する。

この5年間と同じ生活。


俺は、そんな風に生きたいのか。

自問すると、答えは考える間もなく、はじき出された。

“否”。


レアでない女などいらない。

酒で現実をごまかすことは不可能で、

アニウスが良政を行っていないことは、明白だ。


レアに命じて、自分のそばに置くこともできるが、

それは、すでに自分の求めるレアではなくなっていることだろう。




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