国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい
コツン、コツン、コンコン。
遠慮がちに扉を叩く音がする。
この叩き方は、マリカね。
レアは、いつものように、かわいい後輩がやってきたのだと思い、急いで扉を全開にした。
「今日は、遅かったのね。マリ・・カ」
よろしくお願いします、という、毎度元気の良い挨拶の代わりに、
マリカは無言のまま、視線で自分の後ろを指した。
両の眉尻が見事なまでに下を向き、“申し訳ございません”と訴えている。
「ごめんね、マリカ。
今日は、都合が悪いから、暗誦の勉強は、また明日にしていいかしら?」
レアは、やんわりとマリカを拒んだ。幼い彼女を余計な事に巻き込みたくはない。
マリカは、ぺこりと頭を下げると、そのまま小さい体を丸くして背を向けた。
扉が閉まる直前、一度だけ心配そうにレアの方を振り返ったが、
すでに、マルスと視線が交差しているレアの瞳が、マリカの姿を追うことはなかった。
・・どうしよう。
扉が小さくパタンと閉まる音に、マリカは、ぎょっとした。
闇に包まれた廊下が、一段と暗く感じられる。
地獄の淵に立っている、とマリカは思った。
レアが?王が?
それとも。
マリカのくるくるとした瞳に、じんわりと光るものが浮かんだが、
それは、彼女の腕に擦り取られて、すぐに形を失った。