国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい

しかし、マルスはニュクスの模範解答のような受け答えに満足できずに、食いついた。


「20年前、飢饉が起こったとき、

人々は私が生まれたせいだと噂していたとか」


「えぇ、そんなこともあったわね。

ヴェローナ様は神官でしたから、王の妾妃になることに反対するものも多かったのです。


ですが、きちんと還俗して、王宮に入られたのですから、

何も後ろめたいことはありません。


お二人は、愛し合っておいででした。

それは、マルス様も覚えておいででしょう?」


確かに、自分が覚えている二人の夫婦仲は悪くはなかった。

だが、母は、いつも父やディスコルディアに対して、一歩ひいて接していた気がする。

なにか、ひどい負い目を感じているかのように。


それを、マルスは神官から側室になったことに対してだと、今の今まで信じてきた。

しかし、噂話は、“マルスの真実”を揺らすものだ。

たかが、噂。されど噂。

時として、そこに紛れもない“真実”が潜んでいることをマルスは良く分かっていた。


ニュクスの話は、マルスが今まで聞いてきたことと、寸分の狂いもない。

疑うこともなく、20年間信じきっていた、ものとまったく同じ。


だが。











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