国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい
「わかっておいでのはずだ。
あの黒煙の方角は、貴族の屋敷が立ち並ぶ高級住宅街です。
この時刻、まだ皆、出仕前でしょう。
重臣会議を招集するために出した早馬だとて、
おそらく、屋敷まではたどり着いておりますまい」
マルスは、軽く瞠目した。
この男!
「俺に、どうしろと?」
「今ならまだ間に合います。
お逃げください」
ホーエンは、やはり、いかつい顔のまま、平坦な口調で答えた。
丁寧な言葉遣いに少しも似合わない、その顔つき。
はたから見れば、まるで、マルスが叱られている子供のように見える。
「俺に・・・負けろと言うのか?」
「あなたにとって、負けというのは、どういうことを指すのですか?
大事なものは何です?守りたいものは?
王としての面目が大事なら、純潔の誓いを破って牢に囚われた、
あの上級巫女を生贄として民衆に差し出し、この混乱を収めますか?
それが一番手っ取り早いと思いますが」
マルスは言葉に詰まった。