国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい

「わかっておいでのはずだ。

あの黒煙の方角は、貴族の屋敷が立ち並ぶ高級住宅街です。

この時刻、まだ皆、出仕前でしょう。

重臣会議を招集するために出した早馬だとて、

おそらく、屋敷まではたどり着いておりますまい」


マルスは、軽く瞠目した。

この男!


「俺に、どうしろと?」


「今ならまだ間に合います。

お逃げください」


ホーエンは、やはり、いかつい顔のまま、平坦な口調で答えた。

丁寧な言葉遣いに少しも似合わない、その顔つき。

はたから見れば、まるで、マルスが叱られている子供のように見える。


「俺に・・・負けろと言うのか?」


「あなたにとって、負けというのは、どういうことを指すのですか?

大事なものは何です?守りたいものは?


王としての面目が大事なら、純潔の誓いを破って牢に囚われた、

あの上級巫女を生贄として民衆に差し出し、この混乱を収めますか?

それが一番手っ取り早いと思いますが」


マルスは言葉に詰まった。









< 376 / 522 >

この作品をシェア

pagetop