たんぽぽ
「今日はほんと来てくれてありがと。嬉しかったよ」

「ううん。わたしも楽しかったし、来てよかった」

「そっか。よかった。じゃあ、またおいで。つーか、早く帰らないと門限に遅れるんじゃない?」

「門限なんか知らない。もうちょっと一緒にいたい」

「エッ…。そんなのお母さんに怒られるんじゃない?」

「うん…。実際ちょっとやばいかも」

「じゃあ、早く帰らなきゃ。またいつでも来ればいいから」

「うん…」

 僕はうつむく春華にもう一度キスをした。

「じゃあね」

「うん。今日、電話するね」

「うん、じゃあ夜楽しみにして待ってるよ」

「じゃあね」

 春華はそう言うと自転車に乗って、行こうとした。

「あっ風邪うつしたらごめんな。じゃあまた夜」

 僕は少し照れ笑いしながら言う。

「ばか…」
 
 春華も照れていた。

「じゃあね」

 春華はそう言うと、自転車を走らせた。僕は「うん」と頷き、春華の姿が見えなくなるまで、じっと見送った。見送る僕を少し涼しい春の風が包み込んだ。
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