たんぽぽ
 次の日、僕は公園に一時五分前に着くと、もう春華は来ていた。

 僕は春華が待っている電灯の下まで駆け寄る。

「おはよ、早いね。俺早めに来たつもりだったのに」

 僕は苦笑いで話しかける。

「うん。わたしも早めに来た」

 春華は笑顔で答える。

「あっ、そういえばちゃんと迷わずに来れたじゃん。えらいえらい」

 僕は笑いながら春華の頭をなでた。

「だから、ちゃんと来れるって言ったじゃん。わたし、そんなに方向音痴じゃないもん」

 春華は不機嫌そうな顔をして言う。

「ごめん、ごめん。冗談、冗談。ちょっと心配だったから言ってみただけ」

「昨日も同じこと言ってたよ」

 と、春華は笑う。

「そうだっけ?そんなこと気にしない、気にしない」

 僕も笑う。

「じゃあ、今からどうしよっか?春華、昼ご飯食べた?」

「まだ」

「じゃあ、昼ご飯食べながら決めよう。何食べたい?」

「エッ?何でもいい。高嶺に任せる」

「何でもいいの?それが一番困るのに…。じゃあ、洋食か和食か中華か?それともファーストフード?」

「何でもいいよ」

「エーッ!それくらい決めてくれてもいいのに…。じゃあ、洋食ね。この近くにある店知ってるし、そこいこ」

「うん。じゃあそうしよ」

 僕達は自転車を公園に置いたまま歩き始める。

 昨日の晩、電話を切ってからおっじーに聞いといてよかった。僕はほっと胸をなで下ろす。

 公園の中を通って洋食屋に向かった。公園内は数人、人がいるだけで静かだった。

 木々の間から太陽の光がこぼれ、心地よい風が吹く。近くには城跡も見える。この公園の存在は知っていたけれど、来たことがなかったから知らなかったが、とてもいいところだと思った。

 僕達は昨日の話や今日の朝の話をしながら歩いて向かった。


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