たんぽぽ
 僕は大きくため息をついて、梅雨のように雨の止まない外をあの日、春華を見た窓から見ていた。

 僕は2日後に春華の15歳の誕生日がせまっていることにも気づかないほどまいっていた。

 その夜、なかなか寝つくことができずにいた。

 今頃、春華は何をしているんだろう…。もしかしたら泣いているのかもしれない。本当に申し訳ないことをした。春華は僕を許してくれるだろうか…。

 考えてもきりはなかった。ただ、春華に会って話がしたかった。

 翌日は日曜日で、夕方まで寝た。

 頭がボーッとする中でハッ!とあることに気づく。

 今日は三月十九日…。

 急に心臓の鼓動が早くなる。

 明日は春華の誕生日だ。なぜこんな大事なことを忘れていたのか。この一週間、春華のことしか考えていなかったはずなのに…。一体、僕は何をしていたんだろう。

 間抜けな自分に腹が立ち、歯がゆくなった。僕は焦った。

 春華の誕生日プレゼントを買わなければ!気持ちだけが焦り、体が動かない。どうしよう。どうしたらいいのか。

 「そうだ!」と思い出したように隣の部屋へ走る。

 僕の部屋の隣にはおっじーが住んでいる。

 幸運なことにおっじーは部屋にいた。僕は真剣な顔つきで半ば訴えるように頼んだ。

「おっじーッ!お願い!助けて!彼女に誕生日プレゼントを買いたいんだ。僕一人じゃ何を買えばいいかわからなくて…。ついてきて!お願い!」

 おっじーは僕の真剣な眼差しに少し驚いたようだったが快く引き受けてくれた。

 おっじーには長く付き合っている彼女がいたし、女の子の喜ぶものを知っているのではないかと僕は思った。また、いつも春華のことを相談していたのもおっじーだったので信頼できた。

 一人ではどうしようもないところに射した一筋の光だった。

 雨はいつの間にかあがっていて、僕達は街に繰り出した。

 アクセサリーの店やかわいいキャラクターグッズばかり売っている店にも行った。ただアクセサリーはどれもこれも似ているし、何を買っていいか検討もつかなかった。また、アクセサリーはどれも高価だったし、中学生ながら少し重いのではないかと思っていた。

 キャラクターグッズの店でもありきたりなものばかりでピンとくるものはなかった。
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