たんぽぽ
 急いで僕は自分の教室に向かった。僕のクラスは三階まで上がった一番手前の教室だ。

 僕は後ろの扉から入り自分の席に向かう。友達とのからみよりもまずは気にすることがあった。僕は右前方を見る。

 僕の目線の先には誰も座っていなかった。しかし、まだわからない。休憩時間のために教室を離れているだけかもしれない。

 しかし、わずかな希望はすぐに壊された。

 授業がすぐに始まったが、その席はずっと空席だった。一応、友達にも聞いてみたが、やはり春華は今日も学校に来てないということだった。

 大きなため息をつき、落胆を隠せない僕を見た友達は、その日僕に話しかけることはもうなかった。

 授業中、僕は寒そうな外を眺めながら考えた。

 まだ、家から出してもらえないのだろうか…。その前にもしかしたら春華はもう僕には会いたくないのかもしれない。電話をしてもつないでもらえないだろう。僕にはどうすることもできない。

 ……………。

 気づけば授業が終わっていた。

 考えても無駄だった。しかし、とにかくプレゼントだけは渡したいと思い、放課後誰もいなくなった後、春華のロッカーにきれいに包まれたホワイトベアーを入れておいた。

 勝手にロッカーを開けるのは悪いと思ったが教室の机の中はなんとなく嫌だった。

 僕はとぼとぼと来たばかりの道を引き返し歩き始めた。バスはあったが乗る気にはなれなかった。

 時間は夕方の五時前。

 来たときとはうって変わってグランドはにぎやかだった。シュート練習をしているサッカー部、楕円球をパスしあうラグビー部、グランド内を必死に走っている陸上部もいた。そんな人達を横目で見ながら僕は坂道を下っていく。
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