たんぽぽ
 この先生が僕達の寮生活に、まだ影響を及ぼすことがあった。

 この学校もこの寮も高校2年生が中心となり、様々なイベントを盛り上げる。高校3年生は受験を控えているため、ほとんどイベントには参加することはできなかった。

 ある日、僕達3人はその先生の独断と偏見で寮の幹部に選ばれた。そして、僕達3人と女子寮で選ばれた幹部数人で様々なイベントを企画していくことになった。

 例えば、寮内の新入生歓迎のバーベキューや寮内の運動会、寮で暮らす高校3年生の卒業パーティーなどである。

 寮内といっても、約200人の人を動かすということは大変だった。

 毎年、先輩達が企画してきたイベントの企画書を参考にしつつ、それを自分達の色に染めていくという作業は難しくもあったが楽しく、やりがいがあった。

 僕も英男も楠川もこういうことに向いていたようで様々な新しい案を出し、これまでとはまったく異なったことにもチャレンジした。

 例えば、新入生歓迎のバーベキューでは、今までとは違う遠い場所にバスをチャーターして行きバーベキューをしたり、運動会では今までは寮内だけの運動会だったのを修学旅行で日本に来た外国の高校生を迎え入れて行い国際交流を図ったり、高校3年生の卒業パーティーでは、泣かせるための演出を多く用意したり。

 これらのことは、一筋縄ではいかず、様々な苦労もしたが、一つのイベントを成功させる度に僕達は心から喜べた。

 また、僕個人としてもこの先生には影響を与えられた。

 寮での働きを買われ、体育祭の実行委員長を務めるように勧められたのだ。

 体育祭実行委員長といえば、体育祭で1番の権力と責任をもつ役どころだったし、全校生徒の前で挨拶もしなければならない。

 僕は目立つのはあまり好きではなかったし、体育祭は寮とは違い規模も大きい。僕は全校生徒をまとめるどころか実行委員でさえまとめる自信がなかった。

 しかも、今度は英男も楠川もいない。

 僕は正直断りたかったが、寮で何かに打ち込むことへの素晴らしさを知ってしまっていたし、自分の力を試したいとも思うようになってきて、結局引き受けることにした。

 僕は引き受けたからには、責任をもって最高のものを作ろうと決心し、実行委員と力を合わせ努力を惜しむことなく頑張った。
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