たんぽぽ
 高校2年生になった春頃から、春華は毎日、男と一緒に帰っていた。

 その男は同じ学年で、僕とは違うクラスだった。そのため、あまり話したことはなかったが、悪いヤツではなさそうだった。

 あるときに、友達伝いで二人が付き合っていると知ったとき、僕は安心した。

 あれから春華が誰かと付き合っているという話を聞いたことがなかったし、僕のせいで春華が恋愛をすることができないのではないかと思っていたからだ。

 しかし、そうは言ってもやはり、僕の心は少し痛んだ。

 未だに春華が好きということはなかったが、何とも思ってないはずもなく、二人が一緒にいるのを見るのは嫌だった。

 ただ、春華が再び恋愛をしているのを見ると心から〝よかった〟と思えた。

 僕はあのときの引け目もあり、春華には幸せになってほしかった。その相手が僕じゃない他の誰であったとしても…。

 三学期にもなり、文化祭が終わると僕は大学受験を強く意識し始めた。

 あのとき、自分に誓ってからちょこちょこと勉強していたが、実際、学校のことや寮のことが忙しすぎてあまり身についていなかった。

 なんとか国公立大の現役で入らなければ。

 それを常に頭に入れていた。とは言っても、急に何時間も机に向かうのは無理だったし、マイペースで勉強していくことにした。

 高校3年生になった一学期の始業式の日、僕は驚かされる。

 貼り出された自分のクラスの名簿を見て、思わず僕は目を疑った。そこにはなんと春華の名前がある。

 僕は驚きを隠せなかった。

 そういえば、春華も高校2年時、理系のクラスに配属されたのだ。しかし、学校が始まっても僕達は目を合わせることすらなく、同じクラス内に共通の友達もいたが、僕と春華が同じ輪の中で話すことは決してなかった。

 しかしそれは、仕方がなかった。

 僕には話しかけるきっかけも、勇気もなかったのだから…。

 そもそも僕は、春華が完全に僕のことを嫌っていると思っていたし、それを疑うこともなかった。そのため僕は授業中もなるべく春華が視界に入らないようにした。

 しかし、そうは言うものの意識してしまう。

 授業中での僕の発言で、クラスのみんなと一緒に春華が笑っているのを見ると僕はそれだけで嬉しかった。
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