たんぽぽ
 退寮処分ということは、住む家を探さなければならない。

 今度は、リボン館のように下宿ではなく本当の一人暮らしをすることになった。

 近くに下宿所はなかったし、ましてやリボン館に戻れるわけもなかった。仕方なく、不動産屋に行き、部屋を借りることにしたのだ。

 僕の新居は、学校の坂道から見えるスーパーマーケットのすぐ裏で、最寄のバス停まで歩いて五分とかからなかった。

 バスは駅から出ていて、そのバス停も経由して山の麓の駐輪所のバス停まで行くので、毎日そのバス停まで歩いて、バスに乗り学校に通うことになった。

 部屋には勉強机とこたつ机と布団以外はほとんど何もなく、殺風景な部屋だった。

 しかし、立派なキッチンがあり、トイレと風呂はセパレートだったので十分満足だった。

 その前に僕は文句を言える立場ではなかったので、僕にとっては十分過ぎるくらいだった。

  洗濯機はなかったので近くのコインランドリーに行って、洗濯をした。食事は、経済的なことも考え、毎日晩ごはんを作り、その残りを弁当にして学校に持って行った。

 相変わらず朝起きるのが苦手だった僕は、朝ごはんを食べる時間がなかったし、この数年間の内に朝ごはんを食べる習慣はなくなっていたので朝ごはんについては問題なかった。

 前科のある僕には、このくらいのことはして当然だった。

 僕は今度こそ両親を裏切るわけにはいかなかったし、現役で国公立の大学に入ることが僕にとっての必要最低限の義務だった。

 別に親にそう言われたわけではなかったが、痛いほど自覚していた。

 ただ、どうしても煙草だけは止めることができなかった。

 しかし、高校1、2年のときのようにところ構わず吸うことはなくなり、自分の部屋だけでしか吸わなくなった。

 僕の女癖は一人暮らしになり、ますます顕著になってしまったが、学校にはきちんと行き、放課後も学校が閉まるまで勉強した。

 そうでなくても中学1年から高校2年まで、全く勉強していなかったので、このくらいでは足りないが、大学受験を目標として、今までとは心を入れ替えて勉強に励んだ。
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