月と太陽の事件簿6/夜の蝶は血とナイフの夢を見る
「すぐ開けます!」

と言ったあと

「やっぱちょっと待っててください!」

と返ってきた。

バタバタとドア越しでも聞こえる擬音。

あたしは達郎に言った。

「小山洋子に話を訊くのは達郎に任せるわ」

ここまでの道すがらある程度の打ち合わせはしたが、あたしはそれを放棄することにした。

それに対する達郎の一言は

「なんで?」

その昔、ハードボイルド作家が本格ミステリ作家に

「あなたの描く探偵は、女性に興味ないのか?」

といった趣旨の質問をしたらしい。

多分そのハードボイルド作家は『天然』という言葉を知らなかったのだろう。

「いいから。その方が手っ取り早いのよ」

説明するのは面倒だったので、あたしはそのままゴリ押しした。

「…まぁ別にいいけど」

達郎は不承不承といった感じで頬をかいた。

その時、ドアがあいた。

「お待たせしました」

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