月と太陽の事件簿6/夜の蝶は血とナイフの夢を見る
小山洋子の顔には完璧なメイクが施されていた。

ちなみに言っておくが、ここでいう完璧とは昨夜『ルノワール』で見た仕事用のメイクのことではない。

ギリギリでスッピンに見えるという、基礎化粧よりもはるかに高度なメイクである。

この短時間でよく仕上げたものだ。さすが高級クラブのホステス。

「どうぞ。あがってください」

洋子は赤いワンピースの裾を翻しながらあたしたちを促した。

うーんワンピースか。

部屋着ってせいぜいスウェットにトレーナーだよね。

まぁ別にいいけど。

小山洋子の部屋は普通の1LDK。一人暮らしなら、やはりこれぐらいが適当だと思う。

通されたリビングはきれいに片付いていた。

カーペットの上にもゴミひとつない。

バタバタという擬音が気になっていたあたしだったが、これだけ出来れば対したものだ。

この際、ミシミシいってるクローゼットのことは無視してあげることにしよう。

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